日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

2020年1月17日自分という役を演じる


少し前のことですが、「マツコの知らない世界」という番組に、松任谷由実さんが大好き、という20歳代の男性が出演していました。

暫く番組が進んだところで、サプライズゲストとして松任谷さん本人が現れます。

その後、司会のマツコさんと20歳代の男性、松任谷さんの3人でトークを繰り広げました。

その中で、20歳代の男性のある発言(内容は忘れました)に対して、松任谷さんが、

「だって~、私はそういう商品だから・・・」

と言ったのです。

私はその言葉を聞いて、ハッとしました。

歌手やバンドをやっている人は、基本的に、自分の好きなことを自分の好きなようにやっているんだろうな、と単純に思っていました。

自分の感性が主軸で、結果的にファンがそれを支持している、そんな感覚がありました。

しかし、「そういう商品だから」という言葉には、

自分が好むと好まざるとに関わらず、世間が認知している「松任谷由実」という存在を自らつくりあげている、

松任谷由実という偶像を演じている、と意味合いが含まれていると感じました。

そうなると主軸は、どうしたら多くのファンに支持されている「松任谷由実」を維持するかであり、

それを実現するために自分の感性などを当てはめているんだな、と思ったのです。

 

それからしばらくして、矢沢永吉さんのエピソードを芸人さんが披露している番組を見ました。

その中でこんな話がありました。

ある番組でアナウンサーが矢沢さんに

「今もし死んで天使が迎えに来たら、その天使になんて言われたいですか?」

と質問しました。

矢沢さんはすかさず

「決まってるよ、お疲れさん、矢沢永吉って役はどうだった?って訊かれたいね」

と答えたそうです。

私は、矢沢さんは自分の好きなように音楽をやっている、というイメージが強い人でした。

その人が「矢沢永吉という役」を演じている、と言ったのです。

やっぱり、矢沢さんも矢沢永吉という役を敢えて演じているのか・・・

これも私にとって、とても印象に残る言葉でした。

 

考えて見ると、私たちもそれぞれの立場で、その役を演じている、という側面があります。

私なら、

・日本話し方センターの代表という役

・アタックスのグループサポート本部メンバーという役

・家庭での夫・父親という役

という役をそれぞれに演じている、と言えます。

だから、家にいる時と職場にいる時とでは態度も話し方も表情も違います。

 

そう考えると、人前で話す時も、ある意味で人に自分の言いたいことを伝える役を演じている、という意識も大切だと思います。

人前で話をするということは、聞き手に何か伝えたいはずです。

その際には、一人静かに事務仕事をしている自分とは違うテンションやパフォーマンスで話をしないと、聞き手には伝わりません。

実際、話し方教室の講師の中には、

「スピーチは自分という役を演じるんですよ。」

とお伝えしている人もいます。

私もその通りだと思います。

人に何かを伝えるには、それなりのインパクトが必要です。

そのインパクトを出すためには、敢えて普段の自分を捨てて、その場面に相応しい役を演じる。

こうした意識も必要だと思っています。
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